大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成12年(行ス)28号 決定

主文

本件抗告をいずれも棄却する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙即時抗告申立書及び即時抗告申立補充書

(一)  (各写し)に記載のとおりである。

二  当裁判所も、抗告人らの本件執行停止申立ては、いずれもその利益を欠き不適法であるから却下すべきものと判断する。その理由は、当審における主張に対する判断を次のとおり付加するほか、原決定理由説示のとおりであるから、これを引用する(ただし、原決定六頁九行目の「申請の不受理の」を、また同七頁九行目から同一〇行目の「申請不受理」をそれぞれ「拒否」と改め、同七頁末行の「前記」から同八頁一行目の「ならず、」までを削る。)

(抗告人らの主張に対する判断)

申請に対する拒否処分については、その執行を停止してみても、当該拒否処分がされる前の状態に復するだけであるから、右の状態に復することによって、申立人の権利の保全、損害の発生又は拡大の防止等と直接関係する法的な利益が認められない場合には、右処分の執行停止を求める申立ては、その利益を欠き、不適法というべきところ、抗告人らは、本件執行停止を求める法的な利益として、① 就学申請により自動的に就学の効果が生じ、相手方には申請を許可あるいは不許可にする裁量権はないのであるから、本件就学拒否処分の執行を停止することにより、抗告人らに就学という利益が生じること、② 仮に調査、審査及び決定という過程があるとしても、相手方に対し調査、審査及び決定を義務づける利益ないし就学するための手続上の利益があることを主張する。

しかしながら、①については、本件就学申請には転入届が添付されていないのであるから、相手方は、右申請に対し、抗告人らの状況を調査し審査することによって、その現住所を認定し、就学すべき学校を決する必要があり、また就学に当たっては当該子女にどのような教育をどのように受けさせるべきか等といった教育上の配慮も必要であることを考慮すると、なお相手方には抗告人らを就学させるに当たり裁量の余地があるということができるから、本件就学申請により、当然に特定の学校に就学するとの効果が生じるものとはいえず、抗告人らに執行停止を求めるにつき就学という利益があるとはいえない。また、②については、抗告人らの主張する利益はそれ自体は抗告人らの権利の保全、損害の発生又は拡大の防止等とは直接関係がないので、これらをもって、執行停止を求めるために必要な法的利益に当たるとはいえない。

以上のとおりであるから、抗告人らの主張は理由がない。

よって、原決定は相当であり、本件抗告はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 瀬戸正義 裁判官 遠山廣直 裁判官 河野泰義)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例